あの星に手を伸ばしつかまえるその日


 大阪ってラダーあったっけないんだっけと思いながらふと見上げた天井にラダーがあって、あれラダーやるんだったっけ、と思いながら祈っていたら二階席は降りなかった。だからないと思い込んでたんだっけ、と考えてみても思い出せない。梅芸に来ること自体がひどく久しぶりな気がした。あんなに通ったチャリチョコが今年のことだって信じられない。フェスティバルホールだけど。
 客席降りがなくても光一さんは歯を食い縛りラダーを強く握りながら美しく背を伸ばして飛んでいた。あの翻る赤い布も、煌びやかな金色と傘も、オープニングのSo Feel It Comingも。あれ天井からの登場って帝劇でもやってないんだっけ。今はない演出が、次々に脳裏に蘇ってくる。ネットに包まってフライングするAFRICAとかも、たまに思い出す。
 SHOCKはどんどん上演時間が短くなる。だから記憶にある台詞を、ステージの上のカンパニーが口にしないことも多くなった。今回で最後なのに、わたしの中にはしっかりと別の台詞が浮かんでいるのに、板の上のカンパニーは違う言葉を告げている。すごいなあ、と思った。十何年か観てきただけのわたしより、光一さんはじっくりと過去のSHOCKが焼き付いているはずなのに。二十四年目になってもなお、進化し続けるSHOCK。格好良い。自担が今日も最高に格好良くてしあわせで浮かれている。綺咲愛里さんのリカは本当にかわいくてだいすきだし、ユウマは確かに刀をすり替えちゃいそうな危うさがある。ライバル役はこの匙加減が解釈によってかなり振れ幅があるのが面白いなあと思うのだけど、ユウマは「やりそう」だ。ショーが好きで、カンパニーが好きで、コウイチのこともリカのことも好きだけど、考えて考えて壊してやりたい、ってなりそうな感じが、ユウマにはある。あとライバル役曲がめちゃくちゃ似合ってた。ユウマはコウイチの後でカンパニーを継いでくれるけど、シェークスピアはやりたくない!って言いそうな気がする。そういうとこが好き。自担のリチャード三世ほんとにすきだから、いつか舞台で悪役が観たいな。アーサイトもウォンカ様もそれはそれはだいすきだけど、コウイチはもう別格だけど、まだまだわたしは知らない自担を観てみたいと思う。
 ONE DAYのことが、とてもすきになった日だった。基本が踊り子厨でドームでバラード三連チャンは寝るから止めてと言って憚らないだめだめなオタクだけど、今日、わたしはとてもONE DAYのことがすきになった。それは綺咲愛里さんのリカが、「私たち、皆からの、感謝の気持ち!」とコウイチへのプレゼントを誤魔化すときに、本心なんだ、と思わせてくれたからかもしれない。曲中に流れていく星に指を組んで願い事をするリカの願い事はきっと、コウイチと恋人同士になれますように、じゃなくて。このカンパニーが続きますように、とか。ブロードウェイで踊れますように。とか、そういう願いな気がする。コウイチと一緒に、と最後に付くかもしれないけれど。リカがコウイチのために選んだペンダントを、カンパニーからの贈り物だと言ったように。リカの姿を見て準備した指輪の箱を音を立てて閉じるユウマも、とても好きだ。屋上の彼らは皆、コウイチと、カンパニーを、愛している。
 わたしは帝劇で本編を観ていないので、ニューヨークのシーンのユウマとリカの振りが変わったのにとても動揺した。なにあれ可愛すぎるんだけど!!!!!!! 花束キャッチとかウィッグ飛ばすのとか全部めちゃくちゃきれいに決まってたのは大阪カンパニー仕様なのかな。このあたりの場面もカンパニーの地元で最強俺らの仲間!感が強くて好き。
 これまでの、特に初期のSHOCKは、とにかく「良いショー」を作り上げることに拘泥するコウイチと、雨の中で踊ってるのを見たときのように付いていけないと感じてしまうライバル、という視点だったように思う。コウイチの台詞が変わったように、今回は「カンパニーの成長のため」に敢えて嫌われ役でも構わないと言うコウイチになってる気がした。それこそ、コウイチという圧倒的なセンターがいなくなった後でも、カンパニーが走り続けられるように。それは今年が最後という、このSHOCKという作品にも重なる。光一さんはコウイチと自分は全然違う、自分はあんなに厳格ではない、みたいなことを一時期よく言っていたように記憶しているけれど、わたしにはいつだってコウイチは光一さんの一部だから、ハッピーエンドのジャパネスクも、みんなで踊るHigherも、リカとユウマが相変わらずもだもだしてるのも、観てみたいと思ってしまう。その答えがエターナルなんだから、やっぱりコウイチは死んでしまうわけだけど。
 最初にSHOCKを観た夜を思い出す。一番に浮かぶのは、有楽町線のホームの熱気だ。今ここで飛び込めば、わたしは人生でいちばんしあわせな生を終えることができる。寸分の迷いもなく、わたしはそう思った。
 死にたいのかと思ったからだ。わたしがずっと、世界でいちばんだいすきなひとは。自分で書いた脚本で、何回も何回も殺されてみるから。何年か何十年かしてでも構わないから、教えてくれたら良いのに。ねえ光一さんは、Endless SHOCKの初演の脚本を作っていたときに、なにを考えてたのかって。覚えてへん、って笑いそうだな。そういうところもすき。想像でしかないけど。わたしの世界でいちばん大切な、美しい偶像たるひと。
 ステージに立って踊っている姿を観ることができるのを感謝する。同じ時代に生きていることを。SHOCKを観るといつも、わたしは光一さんやカンパニーのように一生懸命に生きているのか、光一さんを好きでいる者として相応しいのかを考えてはやっぱり生きるのはやく止めたほうが良いと。そう考えてしまうけれど。
 光一さんが、元気に過ごしてくださいと。そう言ってくれたから。
 わたしは今日もあなたのことがだいすきで、世界でいちばんしあわせなオタクです。
 どうか光一さんの世界が、しあわせであたたかいもので満ち溢れていますように。